クラフト・ハインツの期待と失望~バフェットとレイ・ダリオの視線の先に~個別株予想に挑む

著名投資家たちは何を見ているのだろうか。その思考の先にあるものを探る!真実があるのかカラクリなのか!

伝説の投資家ウォーレン・バフェットや世界最大のヘッジファンドを率いるレイ・ダリオ、株式投資研究の世界的権威ジェレミー・シーゲルなど多くの著名投資家がクラフト・ハインツをその投資銘柄に組み入れたり推奨したりしています。
しかし何故か株価は冴えません。それでも推奨するその思考とはどういうものなのか探っていきたいとおもいます。

著名投資家たち

【ウォーレン・バフェット】投資会社バークシャー・ハサウェイを率いる伝説的投資家。世界長者番付の常連。クラフト・ハインツは売らないと明言している。クラフト・ハインツ筆頭株主で26.6%保有。バークシャー・ハサウェイのポートフォリオ5位の銘柄。

【レイ・ダリオ】アメリカの投資家でヘッジファンドのブリッジウォーター・アソシエイツを率いる。2013年世界最大の投資ファンドとなる。2021年現在で1000億ドル以上の運用資産を持っている。2022.6期のSEC(米国証券取引委員会)提出の投資先報告Form 13Fでは、ファンド内のポートフォリオ投資比率40番目で0.46%に投資比率を増やしている。

【ジェレミー・シーゲル】アメリカのペンシルバニア大学の教授にして株式投資の世界的権威。 著書である「株式投資の未来」は有名。株式投資の優位性と配当再投資を説き、高配当バリュー株を推奨している。リターン率を元に順位付けしており、クラフト・ハインツは11位としている。因みに1位はタバコ事業のフィリップ・モリス(アルトリア・グループ)。

未来を予測する指針
  • 株価が明日上がるか下がるかは誰にも予測できないが、過去と現在の情報で中長期的に方向性を示す。
  • 今知りうる情報は全員が知っており、これから出る情報も証券アナリストや機関投資家達がいち早く手に入れる。したがって今後の展開の創造力を働かせた予測に重点を置く。
  • 現在価値と予測した将来の価値に差がある会社に着目する。
  • 将来社会を変える可能性があると思う技術に着目する。
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クラフト・ハインツ誕生の経緯

ハインツ
  • 1905年
    法人化

    創業者のハインツが初代社長となる。品質管理とライン生産方式を採用。

  • 1919年
    創業者死去

    次男のハワード・ハインツが2代目社長となる。スープとベビーフードでトップセールス商品を出す。

  • 1941年
    3代目社長ジャック・ハインツ

    冷凍食品会社オレアイダ買収(米冷凍食品最大手)

  • 1959年
    創業家以外で初の社長フランク・アーマー就任
  • 1973年
    トニー・オライリー社長就任

    1987年会長1998年不振の責任を取って退任するまで長きにわたり職にとどまっていた。

    その間、プライベートブランドに押され値下げ圧力を受け、ヒスパニック系アフリカ系人口増と嗜好により業績は悪化していく。

  • 1998年
    副社長ウィリアム・ジョンソンがCEOに昇格

    ブランド力を活かしグローバル化に成功、好業績を収めた

  • 2013年
    バークシャー・ハサウェイと3Gキャピタルにより230億ドルで買収される

    ウイリアム・ジョンソンCEO退任し、元バーガーキングCEO迎えたことからマクドナルドとの取引が停止となる。

  • 2015年
    クラフトフーズと合併

    バークシャー・ハサウェイと3Gキャピタルが主導

クラフトフーズ
  • 1923年
    クラフト・チーズカンパニーに改称

    起源のナショナルデイリープロダクツより改称

  • 1969年
    クラフトへ社名変更
  • 1988年
    フィリップモリスがクラフト買収

    129億ドルで買収

  • 1989年
    ゼネラルフーズと合併

    フィリップモリスは1985年買収したゼネラルフーズと合併させた

    社名をクラフト・ゼネラルフーズへ

  • 1995年
    クラフトフーズへ社名変更
  • 2000年
    ナビスコと合併

    フィリップモリスが189億ドルで買収したナビスコと合併させ株式公開し再上場する

  • 2007年
    スピンアウトにより独立企業に

    88%所有するアルトリア(旧フィリップモリス)の株主に売却配分することにより独立

  • 2008年
    バークシャー・ハサウェイ8%出資
  • 2010年
    英老舗製菓キャドバリー買収

    195億ドルで買収するが工場の閉鎖移転で英国内から批判を浴びた

  • 2012年
    会社分割

    北米食品事業中心のクラフトフーズ・グループとキャドバリーと元クラフトフーズの事業を引き継ぐモンデリーズに分割

  • 2015年
    クラフトフーズ・グループがハインツと合併

    バークシャー・ハサウェイと3Gキャピタルが主導

クラフト・ハインツ
  • 2015年
    クラフト・ハインツ誕生

    北米で3位、全世界で5位の食品メーカー誕生

  • 2017年
    1430億ドルでのユニリーバ買収提案を拒否される

    ユニリーバ側が即時拒否、ヨーロッパの企業であるユニリーバが企業文化の違いを嫌ったとの見方がある

    次なる買収先としてクラフトフーズを会社分割(スピンオフ)したモンデリーズの名前が上がる。

クラフト・ハインツ誕生の関係先解説

【クラフトフーズ】飲料、チーズ、スナック菓子などの食品メーカーで多国籍コングロマリット企業。1988年フィリップ・モリスに129億ドルで買収される。ゼネラルフーズや英老舗菓子メーカーのキャドバリーと合併や買収を繰り返し巨大化。スピンオフによりキャドバリー主体のモンデリーズと分社化した後、2015年ハインツと経営統合する。

【H.J.ハインツ】アメリカの食品メーカー。世界1位のブランドを多数保有しケチャップは有名。2013年バークシャー・ハサウェイと3Gキャピタルに230億ドルで買収される。2015年両社主導でクラフトフーズと経営統合され、世界第5位の食品メーカーとなる。

【3Gキャピタル】ブラジル系アメリカ人の運営する投資会社。バーガーキングの買収や、アンハイザー・ブッシュ・インベブのSABミラー買収など、数々の大型案件を手掛ける。

【バークシャー・ハサウェイ】ウォーレン・バフェットが経営する投資会社。事業としては損保事業を営んでいる。

クラフト・ハインツは世界的食品会社クラフトフーズとH・J・ハインツが2015年バフェット率いるバークシャーハサウェイ社と投資会社3Gキャピタル社の協力により経営統合された売上規模世界第5位の食品会社です。

社歴をなぞると両社とも事業組み換えなど多くの転換点を経ており、決して順風満帆ではありませんでした。強者連合というよりは弱者連合に見えてしまいます。バークシャー・ハサウェイと3Gキャピタルが両社を合併させ、競争力のある巨大企業に仕立て上げようとしたのですがうまくいいっていないというところでしょうか。

遡るとクラフト・ハインツの一方の前身であるH・J・ハインツを2013年バフェットが3Gキャピタルと共同で230億ドルで買収しており買収価格は負債も含めると1株当たり72.5ドルとされています
クラフトフーズ買収に当たりバークシャー・ハサウェイと3Gキャピタルは100億ドルの追加出資を行いその結果株価は87.88ドルに急騰した過去があります。この100億ドルは買収に際しての1株あたり16.50ドルの特別配当に当てられています。
バフェットは近年クラフトフーズ買収価格は払いすぎたと言っています。それは真実だと思いますが、したたかかなバフェットは、優先株配当やワラントなどの別の名目でしっかりと回収しています。次項「クラフト・ハインツの取得原価はトータルでいくらなのか」で詳しく解説いたします。

出典:Yahoo!ファイナンス

クラフト・ハインツの取得原価はトータルでいくらなのか

結局クラフト・ハインツ誕生にバークシャーはどれ程コストをかけたのでしょうか。
2015/3/24取引終了後のクラフトフーズの株価は61.32ドル時価総額360億ドル。
翌日にH・J・ハインツとの経営統合が発表されます。

クラフトフーズの株主は新会社クラフト・ハインツの株式の49%と1株あたり16.50ドルの総額100億ドルの特別配当を受け取る条件です。前述のとおり100億ドルが買収に応じる株主に対するプレミアムになります。
バークシャーのクラフトフーズの取得原価は98億ドルと記載されており、現在発行済株式の26.6%を保有しています。買収発表の前日の株価61.32ドルが基準となっていたので計算はほぼ一致します。また2013年のH・J・ハインツ買収には230億ドルかけておりバークシャーと3Gは50%づつ保有していました。

コスト計算は以下の通りとしました。

クラフトフーズ取得原価98億ドルバークシャー・ハサウェイの帳簿上の取得原価+ (プレミアム100億ドル × 対3G保有比率バークシャー55%)クラフトフーズ買収でバークシャー・ハサウェイが負担した特別配当+ (H・J・ハインツ買収コスト230億ドル × 保有比率50% )ハインツ買収でバークシャー・ハサウェイが負担した金額= 268億ドル

これを保有するクラフト・ハインツの普通株式325,442,152株で割ると1株あたり82ドル強です

バフェットのクラフト・ハインツ取得原価が更に下がる仕組みとは

以下いくつかのバークシャー関連記事を並べてみる。

  • バークシャーはクラフト・ハインツの2018/10-12期大幅赤字による株価急落で30億ドルの損失を計上。
  • バークシャーは2018年保有するクラフト株の評価額を前年の176億ドルから138億ドルに引き下げた。取得原価は98億ドル。
  • 2019年と2018年の最初の9ヶ月間にクラフト・ハインツから受け取った配当金は3億9100万ドル(2019年分)と6億1000万ドル(2018年分)で投資の帳簿価格の減資として記録されている。(クラフト・ハインツが配当を62.5セント/株から40セント/株へ引き下げたため)
  • バークシャーは現在発行済株式の26.6%を占めるクラフト・ハインツの普通株式325,442,152株を所有している。
  • ・バークシャー・ハサウェイが保有するH・J・ハインツの優先証券80億ドル。
  • 2016/6 上記優先証券80億ドルが近く償還される。クラフト・ハインツはバークシャー・ハサウェイへ優先証券の配当として年間9%7億2000万ドルの配当金を支払っている。2013年のH・J・ハインツとの合意で80億ドル相当の優先証券を発行している。優先証券にプレミアムを払って3年後に償還できる合意内容となっている。
  • バークシャーと3Gキャピタルがハインツを買収し株式非公開企業 とした2013年の合意では、バフェット氏は1株当たり1セントでハイン ツ株5.4%を買い増しすることができるようにワラント権(予め決められた価格で株を買う権利)が付帯されていた。18日のハイ ンツ届け出によれば、バフェット氏は約46万2000ドル(約5700万円) で4620万株を取得した。

以上のような記事からバークシャー・ハサウェイはハインツ優先証券を保有しており、💡その間年9.0%とかなりの配当を受け取っていること、ワラント付帯条件で4620万株をただ同然で手に入れる権利があったことなどを考えると実際はかなり穴埋めされているのだろうと思われます。

計算してみましょう。今までにバークシャー・ハサウェイがこの取引で得た利益です。

ハインツ優先証券の償還金80億ドル + ハインツ年9.0%3年間の利息21.6億ドル + クラフト・ハインツ2017年~2019年3年間の利息16.1億ドル + ハインツワラント条件4620万株の買収時株価58ドル/株で26.8億ドル

💡合計するとなんと145億ドルになるのです。

償還金とその間の配当金などを合計すると取得原価は145億ドル割り引いて考える必要があります。
268億ドルの取得原価はなんと半分以下の123億ドルになってしまうのです。
すると💡1株あたりの取得原価は38ドルまで下がることとなります。2020年以降の配当金を簿価減資などに使用していれば更に下がっているかもしれません。100ドル近い高値から20ドルを割るところまで暴落して少し経過していますが現在の株価34ドル近辺で売っても大きな損はないということになってしまうのです。

ナショナルブランドとプライベートブランド

バフェット氏自身がクラフト・ハインツの最大の脅威はウォルマートやコストコのプライベートブランドだと語っています。
事実プライベートブランドはナショナルブランドより伸びている統計があり、消費者の健康志向への変化などクラフト・ハインツの株価が冴えない理由として様々あげられています。
ケチャップ(ハインツ)などの調味料はナショナルブランドの壁は高いが、チーズや肉製品(クラフト)はそれほど高くないという記事もよく目にします。
しかし、日本においてもプライベートブランドは過去に多く出回りましたが、けっしてナショナルブランドを凌駕する存在にはならなかったし、母体の栄枯盛衰と運命はともにありました。

セブンイレブンのセブンプレミアムは製造している企業はヤマザキやサントリーなどのナショナルブランドを持つ一流企業です。イオンのトップバリューもナショナルブランドの競争力のある企業に製造委託しており高品質です。ナショナルブランドもプライベートブランドも結局製造を手がける企業は決まっておりプライベートブランドが自社店舗の壁を乗り越えてナショナルブランドを駆逐するような状態は考えにくいのです。

コストコのプライベートブランド「カークランドシグネチャー」は高品質ですが、ナショナルブランドを手掛ける多くのメーカーによりその品質は支えられています。その中でもハインツのケチヤップなどの調味料にクラフトのチーズ関連商品などは常に一定の売り場面積を確保しています。ナショナルブランドがプライベートブランドの製造を手掛けるのはライバル社の商品を売り場から追い出すことがメリットの一つだと言われています。売り場で存在感があるということはブランドの証明なのです。
いずれ頭打ちでナショナルブランドの底力が発揮される状況に変化するだろうと予想しています。

「のれん」と「非流動資産」の恐ろしさ

バフェット銘柄として高配当連続増配のクラフト・ハインツが2018年減配を発表し、株価90ドル近辺から半値以下まで下げ驚いた方も多いと思います。💡当ブログでも幾度となく警鐘を鳴らしてきたブランド毀損によるのれん代の評価見直しが起こりました(スシロールネサスエレクトロニクスの記事に詳細記載)。買収を繰り返したクラフト・ハインツは、多額ののれん代と非流動資産(非償却資産、無形資産=会社の信用やブランドなどの目に見えない価値)を抱えています。毎年償却しなければならない日本の会計基準と違い、国際会計基準では棚上げできます。ただし、ブランドに毀損があると監査法人から判断されると厳しい減損テストが待っています。減損テストで不合格(ブランド毀損の判定)になると、のれん代や非流動資産を償却しなければなりません。クラフト・ハインツで起きた暴落はまさにこのことです。

銃爪ひきがねは合併後のゼロベース予算という3Gキャピタルにより全社的に導入された徹底したコスト削減策でした。低コスト国調達や電子オークションにより内製外製を見直し、高効率サプライチェーン達成をしなければならない購買部門の幹部職員は、サプライヤーたちに仕入れに伴うリベートを前倒しで貰う約束を取り付け、不正会計を行いました。証券アナリストたちに約束した年間予算の削減目標が厳しくなってしまったからです。その額わずか50万ドルでした。それだけ「のれん代」と「非流動資産」の減損テストへのプレッシャーは大きかったのです。

大型買収を繰り返して誕生したクラフト・ハインツは、2017年にはなんと1058億ドルの「のれん代」と「非流動資産」を抱えています。クラフトとハインツが合併する前の両社合計は139億ドルでした。いかにすごいかお分かりになると思います。以下に記します。

のれん代非流動資産合計
2014/12114.04億ドル25.6億ドル139.04億ドル
2017/12448.24億ドル610.24億ドル1058.48億ドル
2018/12365.03億ドル508.05億ドル873.08億ドル
2022/12308.33億ドル450.43億ドル758.76億ドル

2017年から2018年にかけて185億ドル(1ドル140円で2兆6000億円)減損処理しています。その後も毎年少しづつ減損処理をしていますが758億ドルあまり(10兆円以上)の「のれん代」と「非流動資産」をまだ抱えているのです。2014年の水準が妥当とするならば後20年は優にかかりそうです。

<strong>「独り言です」</strong>
「独り言です」

これがあるからバフェットは売らないと言うより売れないに近いと思う。じっと持って機をうかがうのか、なにか仕掛けるのかどうだろうね。

企業統治について

クラフト・ハインツの筆頭株主であるバークシャー・ハサウェイのバフェット氏は、経営に口を出さないことで有名です。これは企業統治上極めて重要で、当ブログが一貫して主張している最も強力な企業統治形態である創業家統治企業に近いのです。

ただしバフェット氏は企業に出資するときに「あなたがそのまま経営に携わるなら」という条件で企業買収をします。ハインツのビル・ジョンソン最高経営責任者(CEO)はクラフト・ハインツとなったあと経営陣にその名前はありません。3Gキャピタルとタッグを組んだ今回の買収ではバフェット流を貫いた今までの買収とは少し違う感じがします。

現在は買収のもう一つの相棒、3Gキャピタルの運営にあたるアレックス・ベーリング氏が会長です。脇を固める副会長とCEOは確かに食品関係を渡り歩く経営のプロです。しかし、3Gキャピタルはプライベートエクイティファンドですから株価が上昇しなければ話になりません。3Gが買収し低迷していたバーガーキングを利益を出す企業に変身させたのダニエル・シュワルツ氏のようには行かないようです。

シュワルツ氏は29歳の若さで3Gからバーガーキングの経営を任せられると、自らトイレ掃除や接客を経験しどこに問題があるか探りました。会社所有のジェット機は売却し、国際通話は無料のスカイプに切り替えさせ中間管理職ほぼ全員に自社株をボーナスとして拠出するプログラムを実施しました。このような情熱は巨大なクラフト・ハインツには通用しません。ベーリング氏はリストラを敢行しましたが企業価値を高めたとは言えないのです。

<strong>「独り言です」</strong>
「独り言です」

巨大企業の経営は3Gキャピタルには荷が重いのではないだろうか。強い信念と情熱を持つ経営のプロが必要だと思う。その時が一つ転機で狙い目かも。

モンデリーズとの再合併の可能性はあるのか

2017年ユニリーバへの巨額買収を仕掛け拒否されました。その後2018年にはブランド毀損を監査法人から指摘され会計疑惑も相まって株価は大きく下落、時価総額下落に伴い資金力も低下しています。

一方、クラフトフーズをスピンオフしたモンデリーズグループは順調です。
のれん代234.5億ドル、非流動資産279.4億ドルで合計513.9億ドルは巨額ですが、会計基準により棚上げです。ブランド毀損と指摘されない限り償却の必要がありません。

2023年の現在においては時価総額1000億ドル(14兆円)のモンデリーズグループに440億ドル(6兆円強)のクラフト・ハインツと一緒になるメリットはあまりないのではないでしょうか。

株価の底値はどこにある

よく「これだけ下がったからもう下はないだろう」という底値拾いの推奨があるが、高値のピークも底値の終わりもチャートからはわからないし誰も予想できません。
全てはあとからの結果論です。

クラフト・ハインツの最高値は97.77ドル2017/2 で最安値は20.77ドル2020/3です。
現在の冴えない株価が過去の最安値を下回らない保証はどこにもないのです。
NTT、シティグループ、AIGこれらの巨大企業は最高値から90%近くか90%以上下落しています。

3Gキャピタルが保有株を手放すことはないのでしょうか。バークシャーは保有し続けると言っていますが売却することは本当にないのでしょうか。
💡もうこれ以上下がらないだろうと考えて買うことに根拠は全く無いのです。

高配当株とは何か

💡高配当株を考える場合それだけの配当を出さないと投資してくれないという前提を忘れてはいけません。
それだけリスクは有るのです。特に配当性向には十分注意を払っておくべきでしょう。
高配当で投資資金を集め常に設備更新し続けなければならなかった電力株の現在位置はどうなのかよく考える必要があるのです。
配当性向が90%超えの誰もが知る大企業だって日本にはあるのです。

用語解説

【配当性向】
最終利益である当期純利益に対する配当の割合

著名投資家たちの姿勢そしてバフェットは

レイ・ダリオのポートフォリオには2020年4月期でクラフト・ハインツ保有比率0.10%となっています。2022年3月の保有比率0.36%、2022年6月0.40%と増加傾向ですが限定的となっています。

シーゲル銘柄と言われているものの中の11位にクラフト・ハインツは入っています。特に2022年後半から更に低迷する株価ではありますが、2021年までは安定した高配当株という位置づけだったようです。最新のポートフォリオがどうなっているか興味深いです。明らかになってくれば機会あれば分析したいと思っています。

💡バフェットのH.J.ハインツ買収時の様々な条件には恐れ入ります。それでもやはりクラフト・ハインツを誕生させて世界第5位の食品メーカーを誕生させたその先に、ネスレを凌いで世界最大の食品メーカーになるという目標があるはずです。ユニリーバ買収に失敗し世界最大にはなれませんでした。力を蓄えた後、次はどこを狙うのでしょうか。それが冒頭の命題の答えになります。著名投資家たちが見ている先。
世界最大の食品メーカー、その夢が叶うのかバフェットが諦めるのかはバフェット銘柄が教えてくれます。今だ主要銘柄で投資比率は落としていません。投資銘柄から名前が消えたとき、夢を諦めたのです。

予測する

クラフト・ハインツは強力なブランドをいくつか持ち、有力なブランドも多数持ちます。
ゆえにもうこれ以上下がらないだろうと買いの誘惑が常にある銘柄です。ましてや著名投資家好みの銘柄です。💡しかし反発するには大きな何かが必要です。多額の「のれん」と「非流動資産」を抱えるクラフト・ハインツは、大きなインパクトがないと株価は上がりません。
それはプライベートブランドに勝利したときなのか、3Gからバトンタッチした場合の新経営陣が企業改革に成功したときなのか、それとも何か他の要因が現れるのか、いずれにせよ一定の長い年月を必要とするでしょう。
低迷する株価が示す通りユニリーバを買収しようとして失敗して以降、再び企業買収を試みる資金力は今はありません。
現状の企業としての実力からすれば、「のれん」と「非流動資産」の償却を乗り越えて、株価が大きく伸びる材料は乏しいように思えます。
これから買うのであれば現在の企業価値を何らかの理由で大きく下回ってしまったときだと思います。
それならば将来の価値と現在の価値に差が生まれます。

バフェットの計算上の株式取得原価は80ドルを越えていますが、様々な有利な条件が包含されており実際は38ドル程度ではないかと推測しています。更に簿価は下げていると見ますが、正確に計算する根拠は今は手元にはありません。
バフェットは売るのか売らないのか。もし一部でも売れば大きく株価は毀損します。バフェットが大きく損をしないラインは思ったより低いのです。何か企業価値とは別の不測の事態が起こり、最安値を更新するような状況にならない限り、これ以上は下がらないだろうという理由で買うべきではないと考えます。
以下に3つのケースを示したい。

【ケース1:2022/9/24現在34.0ドル前後で買う→中長期保有】

条件①バークシャー・ハサウェイが26.6%の株を保有し続ける。
条件②プライベートブランドに対抗できているEPS(1株利益)などの係数が将来徐々に確認出来てくる。
条件③3Gキャピタルから離れた新たなプロの新経営陣に刷新され、企業改革が進み好材料が今後発表されてくる。

バフェットが売るつもりはないと言っています。ここでは詳述しませんが売らないと言っていたIBMのように、2017年に一部売ってから2018年にかけて全て売却したことを明らかにしたように懸念はありますが、今買って長期保有すれば、プライベートブラントに対抗できて着実に利益が向上する数値が確認でき、経営改革が進むという前提で、上昇に転じ果実を得るタイミングはやってくると考えます。ただしそれがいつかは今は分からないということです辛抱強いウォッチングの覚悟が必要です

【ケース2:大幅な安値(最安値更新)まで待ち買う】

条件①バークシャー・ハサウェイが一部株式を売却する。
条件②売却するが一部にとどまり、一定の持分を保有し続ける。

バークシャーの思っているより低い取得原価(38ドル/株)が受け取り配当の蓄積から更に簿価を減資して下がっていく場合、売却ラインのハードルが下がり一部売却は充分ありえるという推測はできます。その時には株価は最安値を更新する可能性があり現在企業価値を大きく下回るでしょう。
その時点で取得すれば大きな果実が得られるのではないか。ただし下値のピークは誰もわかりません。再安値を更新したときとバークシャーが一部売却してもまだ一部を保有している前提があれば買いと考えます。

しかし懸念は残ります。IBMのように全株売却するかもしれませんが、投資先銘柄と投資額は、四半期ごとにSEC(米国証券取引委員会)に提出するForm 13Fで確認するしかありません。IBMはレッドハットという大型買収が契機となり全株売却したようですが、撤退する条件が潜んでいるかどうかは注意深く確認ウォッチングする必要があるでしょう。繰り返しますが、一般に言われているより遥かに低い金額がバークシャー・ハサウェイの損益分岐点なのです。

【ケース3:正味取得原価58ドル越えれば売る】

条件①バークシャー・ハサウェイが全ての株式を売却する。

前段で優先証券の配当21.6億ドルや通常配当16.1億ドルに加えワラント付帯による株式取得26.8億ドルなどを考慮すると1株あたりの取得原価は38ドルになるとお示ししましたが、純粋に本来返済を受けて当然の優先証券の償還金80億ドルのみを考慮すると、1株あたりの取得原価は58ドルになります。バフェットが58ドル/株で売れば配当やワラントの儲け65億ドルは収益として確定したことになります。
新たな買収を諦めるならこの線ではないでしょうか。夢を諦め売る可能性は充分にあり、それはForm 13Fで銘柄リストが公表されるまで分からないのです。新たな買収話が出れば急騰は間違いなく、売却が明らかになれば急落でしょう。それが分からない以上58ドル/株までは持っておき到達すれば売却手仕舞いという戦略も成り立つと思います。

<strong>「独り言です」</strong>
「独り言です」

バフェットの予想取得原価38ドル以下で買い、投資家として最低限利益を得たと思われる58ドルになる前に売る。これが一番賢明だと思う。バフェットはジム・ロジャーズのように売買対象をほのめかさない。IBMのように売り払ったのが分かったのは、フォーム13Fと呼ばれるSECへの投資報告書で明らかになった後だからね。クラフト・ハインツの売却時期も方針もバフェットの頭の中だよ。

※個別株予想は、あくまで個人的見解を示したもので、投資を勧誘や推奨するものではありません。
過去の実績や未来の予想は投資成果を保証するものではありません。
売却を勧めるものでもありません。
投資の判断は皆様ご自身の決定にてお願い致します。

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