エンゲルボックの記憶をたどって~アイスボックの濃厚な麦汁が記憶と重なる~でも何かが違った!
チェコビールのbudvar編からのボックビールの記憶の味を求める過程で、最初にたどり着いたアイスボックやドッペルボック。
(budvar編はこちらからビールをいただこう~麦芽とホップと水の歴史を訪ねて世界を巡る~Budvar(ブドバー)を飲む)
それは記憶の一部と重なるものの、また違う世界を垣間見させてくれるビールでした。
アイスボックのEku28と、ドッペルボックのサミクラウス・クラシックでボックビールの魅力をご紹介してみたいと思います。
ボックビールの中のアイスボックにたどり着く
アイスボックの名前は聞いたことがあったのですが、ワインにアイスワインがあり、貴腐ワインと並ぶとても甘いワインという理解より更にぼんやりした程度の、理解とは程遠いものでした。
Eku28を飲んで納得出来ました。その特徴はアイスボック製法と麦汁濃度、IBUの数値です。
エク・28 Eku28
特色
クルムバッハ・ブリュワリー醸造所(ドイツ)
エク・28 Eku28
ラガー(下面発酵) ドッペル(ダブル)ボック 麦芽100%ビール
ボックビールだがアイスボックというドッペルボックビールを凍らせて濃縮しているタイプ(凍った氷を取り除く作業を繰り返し濃度を高くする製法)。アルコール度数高く麦汁が濃いため甘い。IBU(苦味)はほぼ無く作られた年によってはN/A(0)がしばしばある。色は濃く香りも高い。醸造香のようなものを感じる。冷やしすぎない温度で舐めるように飲むビール。
330ml Alc.11.0%以上12.0%未満 IBU(苦味)N/A~3.6 SRM(色の濃さ)14.5茶色
発酵前麦汁エキス濃度28.0%
感想
Eku28の濃厚な味と際立った甘みは、エンゲルボックの記憶を呼び起こすものがありました。
濃厚さでは記憶が蘇る部分もありましたが、エンゲルボックはここまでの甘みはなく、もっとスッキリしていて濃厚でもごくりごくりと飲めるビールでした。
アルコール度数の違いもあります。(エンゲルボックは7.5%)
しかし、製法が違うアイスボックですが最初のひとくちでボックビールの記憶がフラッシュバックして、「そうだ、こんな日本ビールにはない濃い味だった」と、ボックビールを探し始めて最初のボックだったので、すこし記憶にたどり着いた気がしたビールでした。
長期瓶内熟成ビールドッペル(ダブル)ボック
次に当たったボックビールも非常に印象の強いビールでした。
確かに1年に1度飲むのがちょうどいい、毎日はとてもではないけれど絶対飲めないビールです。
しかしその濃厚さとアルコール度の高さの所以である熟成方法が、あまりにも興味深く世界の広さを思い知らされました。
サミクラウス・クラシック
特色
シュロスエッゲンベルク醸造所(オーストリア)
サミクラウス・クラシック(長期熟成ビール)2017年
ラガー(下面発酵) ドッペル(ダブル)ボック 麦芽100%ビール
名前はサンタクロースの意味。サンタクロースの誕生日12月6日年に一度限定醸造される。10年瓶内熟成で5年経過が飲み頃。ナチュラルビールなので常温で。
ビターチョコレートのような味わい
330ml Alc.14.0%以上15.0%未満 IBU(苦味)20 SRM(色の濃さ)20焦げ茶色
感想
2017年製で賞味期限2027年なので5年経過で試飲したことになります。
瓶内熟成は空気に触れない還元熟成なのでゆっくりです。
麦芽の香ばしい香りなのですが、例えると砂糖醤油のようなキャラメルが焦げたような匂いがします。
常温で飲みましたが、飲むと強い甘みを感じその後苦味が来ます。
後味は焦がしキャラメルのような後味が残ります。
濃厚すぎて求めていたエンゲルボックの味とは離れてしまいました。
しかし1年後にまた飲みたくなる余韻を引く旨さでした。
濃厚なサミクラウスを飲んだ後、スーパードライ瓶を飲んでみた
日本のビールは麦芽(モルト)を50%以上使っていれば発泡酒や第三のビール(新ジャンル)ではなくビールを名乗れます。
海外のビールももちろん全てが麦芽100%ではありません。
しかし酵母の特徴や熟成方法が日本のビールと違い多様です。
副原料でスッキリ飲ませるのではなく、糖をよく食べる酵母を使用してスッキリさせたり、サミクラウスのように瓶内で10年熟成可能だったりと本当に様々です。
そこで日本のトップブランドに久々に立ち返ってみました。
スーパードライ
言わずと知れた日本のトッププランド。
世界のビール通に通用する味かどうか。
特色
アサヒビール博多工場
スーパードライ
ラガー(下面発酵) 麦芽70%、ホップ、米、コーン、スターチ
2018年酒税法改正までは麦芽比率67%以上がビールだったが、改正で50%以上と使える副原料が増えている。2018年までは限りなく発泡酒に近いビール。
500ml Alc.5.0% IBU(苦味)16 SRM(色の濃さ)4黄金色(ペールゴールド)
感想
日本のビールはどれを飲んでも同じ味に感じます。
瓶も缶も私には味は変わらなかった。私は美味しいと思わなかった。
濃厚なボックビールのあとで飲むと少し印象が変わるかもと期待したのですが同じでした。
麦芽100%のキリン「一番搾り」瓶と飲み比べていただければ分かるはずです。
スーパードライは麦芽は感じません。
副原料が味を薄くしているような印象です。
賞味期限について
スーパードライの表ラベル下に非熱処理と表記はありますが、賞味期限9ヶ月しかないことから、瓶内熟成はしない前提なのかと疑問を持ちました。
調べてみると食品表示法上はアルコール飲料の賞味期限表示は省略可になっています。
ただ、ビール酒造組合の「ビール表示に関する公正競争規約」による自主規制規約で賞味期限の表記も公正競争規約の中に入っています。
景品表示法により公正取引委員会により認定、告示されています。
また最近では賞味期限を1年とする動きがあり、ビールは新鮮なうちに飲むほうが美味しいと思っていましたが、海外のビールの瓶内熟成の事実を知るとそれほど神経質にならなくても美味しく飲めるのかも知れません。
むしろ、保存方法が重要ですね。