Hondaの人型ロボットとSysmexの手術支援ロボットは日本を救えるか~個別株予想に挑む

Hondaの人型ロボットAsimo と メディカロイドの手術支援ロボットhinotoriは輝けるのだろうか

東日本大震災のあと、福島第一原発の放射能に汚染された建屋内でHondaの人型ロボット 「Asimo(アシモ)」がきっと大活躍すると思っていました。しかし実際みたものは、先端にカメラを搭載したロボットアームだったのです。

日本てロボットが得意じゃなかったのか。でもAsimoを開発したHondaは開発能力がないと言います。本当にそうなのでしょうか。あのワクワクする会社Hondaが開発しよう!となんで言わないのでしょうか。Hondaという会社の系譜を見ていくと、無理なことに挑戦してきた歴史じゃないですか。

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(1)ヒューマノイド型ロボット列伝

Hondaと独立行政法人 産業技研が福島第一原発用に開発した「高所調査用ロボット」がAsimoが行き着いた場所でした。Asimoは原発建屋内のような環境下で動くように設計されておらず、そのまま運用することが難しかったと言うのです。たどり着いたコンセプトは「役に立つ目的に絞り込む」でした。

出典:Honda HPよりhttps://global.honda/jp/robotics/high-access_survey_robot/

しかし一方で、Honda開発陣がこの開発を通して感じたことは、狭い階段や入り組んだ配管の中で人に代わって活躍できるのは二足歩行のヒューマノイド型ロボットしか無いという結論でした。同時に日本には開発能力はないという事実も突きつけられたのです。

そしてアメリカの凄さを目の当たりにすることになりました。手塚治虫の描いた漫画 鉄腕アトムがいたのはアメリカでした。東日本大震災の福島第一原発事故を目の当たりにし、過酷な環境下でも活躍できるロボットの開発を加速させたのです。一度は動画をニュースで見た人も多いボストン・ダイナミクス社のバク宙するロボット「Atlas(アトラス)」と、NASAとGM(ゼネラル・モーターズ)が開発した宇宙ステーションで人間を補助する目的で作られた「Valkyrie(バルキリー)」です。「Atlas(アトラス)」の驚くべき能力は衝撃を与えました。2000年「Asimo(アシモ)」が世界を驚かせましたがその後の進化はなぜか牛歩のようでした。「Atlas(アトラス)」発表後、Hondaは「Asimo(アシモ)」に関する情報発信を一切しなくなりました。多くのウォッチャーが沈黙したHondaの姿勢は不可解に思ったはずです。

人型ロボットの進化の歴史
  • 2000年

    Hondaが人型ロボットAsimoを発表し世界を驚かせた

  • 2005年

    Asimo2005を発表 小型軽量化し歩行速度が時速1.6kmから2.7kmにアップし時速6kmで走った

  • 2011年3月

    東日本大震災原発事故に触発され人型ロボットの開発が加速

  • 2011年11月

    Asimoを6kg軽量化 最高時速9kmにアップ

  • 2013年3月

    Asimoの目的別の発展型ロボット高所調査用ロボットが福島第一原発用に納入された

  • 2013年10月

    ボストン・ダイナミクス社が人型ロボットAtlasを公開 ボールをぶつけられても片足立ちでバランスを取った

  • 2015年11月

    NASAが開発したValkyrieが公開された 宇宙ステーションの人間補助用にGMと開発したロボノート2の発展形で将来の火星移住なども視野に入れている

  • 2017年

    Atlasがバク宙する動画が公開される

  • 2018年10月

    Atlasがパルクールをする動画を公開 歩く走る跳躍などは優秀だが手はなかった

ボストン・ダイナミクス社~Atlas(アトラス)

ボストン・ダイナミクス社の「Atlas(アトラス)」の驚愕の運動能力は世界に衝撃を与えました。日本のソフトバンクグループがGoogieから買収、その後80%を現代自動車グループに売却しています。ボストン・ダイナミクス社からすると10社目となる買収の歴史の1つに過ぎず、全てはパトロンとしての資金提供者の位置づけのはずです。

運動能力に重点を置いているため手(ハンド)はありません。そういう意味では人間の機能を代行するには不完全なロボットです。

NASA~Valkyrie(バルキリー)

NASAが開発した正式名称R5通称「Valkyrie(バルキリー)」は火星探査ミッション遂行のため開発されました。4本指を持つこのロボットは、AI機能と合わせて能力向上に注力しています。元々は宇宙ステーションの人間補助のため、R2(ロボノート2)として上半身だけ開発・実装されていましたがアップグレードされたのです。人間の機能を代行することに関してはこちらが上でしょう。

Honda~アシモは福島でなぜ活躍できなかったのか

最近のHondaが全く目立たなくなったと感じている方は非常に多いのではないでしょうか。創業者本田宗一郎氏は創業者が企業を支配する世襲制は良くないと考えて一代限りで身を引いています。資本的にも全く支配しませんでした。「会社は個人のものではない」という考えからでした。そのため身内を入社させることはなく、今も縁故採用はしていません。また、「社長は技術者から選ぶ」不文律も作りました。現在までトップはすべて技術畑出身者です。

しかし、これは後に大きな企業統治上の問題を生じさせました。本田宗一郎氏が潔く身を引いたため、たしかにソニーやパナソニックのようなお家騒動は起きませんでした。💡にも関わらず現在ホンダを悩ませているのは内紛です。二輪事業vs四輪事業、北米事業出身vs中国事業出身、技術畑vs営業畑と複雑な様相を呈しています。

会社に革新的な技術変革や夢のある事業をもたらしたのは、本田宗一郎氏が存命中で影響力を保持していた4代目社長川本氏まででした。💡皮肉なことに「会社は個人のものではない」という考えとは正反対に「会社は個人のもの」だったのです。

(※当ブログは創業家統治型企業を最強の経営形態と考えています。)

ホンダイズム形成期~二人三脚でHondaの基礎ができるまで

初代社長 本田宗一郎氏 1948-1973 1991没 経営☆☆☆ 技術革新性☆☆☆☆☆
副社長 藤沢武夫氏 1964-1973 1988没 経営☆☆☆☆☆
※ランク付けは当ブログの主観に基づいたもので、理解しやすくするためのものです。
Hondaを築き上げたカリスマ的人物にして稀代の技術者。💡「やりたくて仕方がないことを実現しなければHondaは社会に存在する意味がない」ホンダイズムを創り上げた方です。

一方経営の基盤を築いた名経営者が藤沢副社長で、💡専務時代に「目先の業績に左右されないフラットな組織」を目指し本田技術研究所を作り分社化しました。これは今考えても非常に巧妙な理にかなった組織づくりと感嘆せずにはいられません。また、「社長は技術者から選ぶ」という確固とした方針を残したのも藤沢副社長でした。以降、社長は技術畑で副社長が営業畑か事務畑が支える構図が出来上がっていくのです。

本田技術研究所㈱とは何だ

💡本田技研工業㈱本田技術研究所㈱は別会社です。藤沢翁が作り出したこの構造こそHondaの最大の特徴にして夢のある事業を生み出してきた力の源泉です。ただ当初の本田技術研究所はフラットな組織作りを行ったがため変な技術者がそこら中にいたと言います。しかし後にピラミッド組織になり経営への火種を残すこととなるのです。当ブログの見立ては、その最大の理由は、研究所社長がHonda本社社長になる事が既定路線となったことです。すなはち研究者は将来の社長を忖度し、組織の独創性はなくなり官僚的ピラミッド構造が形成されていったのです。研究所は当初のような自由闊達で時には本社の意向に逆らって研究継続するような風土が失われていきました。本田宗一郎氏が存命中のHondaは、本田宗一郎氏のホンダイズムが及んでいたため、そこをかいくぐる研究者の気概が許されました。現在の研究者たちに当時の人物たちの様な破天荒さはもうありません。

二代目社長 河島喜好氏 1973-1983 経営☆☆☆☆ 技術革新性☆☆☆ 2013没
現在のHondaの基礎を作った偉大な功労者にして、本当はヤマハ(日本楽器)に入りたかったHonda初の大卒というワクワクするような経歴の持ち主。なんと実弟は後にヤマハの社長となっています。

2ストロークエンジンの時代に、現代では普通の4ストロークエンジンを採用、北米進出やプロジェクトリーダー制、年齢職位関係なく議論する「ワイガヤ」などを形にした人物。「ワイガヤ」は「小さな宗一郎をたくさん作りたい」という藤沢副社長のアドバイスから生まれています。

ホンダイズム開花期~創業者の庇護のもと、夢のある研究が次々と実現された

三代目社長 久米是志氏 1983-1990 経営☆☆☆ 技術革新性☆☆☆☆
アメリカの厳しい排ガス規制を世界で初めてクリヤーしたCVCCエンジンの開発者。マン島TTレースやフォーミュラーワンのエンジニア。技術者としては頑固で、水冷か空冷かで本田宗一郎氏と激しく議論し、空冷の本田氏が持論を曲げずとうとう出社拒否に及んだという逸話がある方。もてぎサーキット建設を決断しAsimoやホンダジェットのプロジェクトも許可しています。

四代目社長 川本信彦 1990-1998 経営☆☆☆☆ 技術革新性☆☆☆☆
F1にNSXやホンダジェット開発のキーマンだった方!飛行機が作りたくて本田宗一郎氏に作らせてやると半ば騙されて入社したという逸話を持つ方。後にホンダジェットの開発の中心人物である藤野氏とぐるになり久米社長に推進を直談判している。F1エンジンの開発者でありF1撤退に強く反対し辞表まで出している気概の持ち主。ミッドシップスポーツカーNSX開発を進言し本田技術研究所社長時代には本社の意向に逆らってVFR750R/RC30二輪開発と市販化にお墨付きを与えている豪傑。

安定期~創業者亡き後の慣性飛行だったのかもしれない

五代目社長 吉野浩行 1998-2003 経営☆☆☆ 技術革新性☆☆☆
東京大学工学部航空学科出身。初代ホンダ・レーシング社長入交氏(後のセガ社長)や四代目社長川本氏と同期。フィットがヒット。本田技術研究所と北米子会社の社長を務めた王道を歩みました。

六代目社長 福井威夫 2003-2009 経営☆☆☆ 技術革新性☆☆☆
F1にあこがれて入社。実際に第三期F1の指揮を取り、WGP責任者としてNR500/NS500/RVFの開発、監督に携わる。レースへの関与が非常に濃い方でした。この方も歴代社長と同じく、本田技術研究所と北米子会社の社長を務めています。

転換期~飛躍を期して大きな目標を掲げたが失速

七代目社長 伊東孝紳 2009-2015 経営☆☆ 技術革新性☆ 
Honda凋落のターニングポイントとなる人物!
2012年中期経営計画でに600万台生産という当時の規模の1.5倍の目標を掲げ、量への移行を示しました。
部品調達戦略を変更し、クラッチシステムを長年の系列サプライヤーからドイツの世界的メガサプライヤーへ切り替え大量で安価な部品を仕入れコストの低減を狙いましたが、社内のエンジニアたちは混乱しフィットとベゼルのリコールへとつながっていきます。タカタのエアバック欠陥問題が企業収益の悪化に火に油を注ぎ、コストカットと規模拡大がホンダを大きく狂わせていきます。
伊東社長の600万台生産目標は、将来予測をするのに根拠の積み上げが希薄で経営にアマチュアを感じます。

暴君タイプの伊藤社長は社内も経営陣もまとめきれず、社内外からの圧力により、当時無名の八郷氏を9人抜きで後継指名して退きました。

改革期~前例のない改革を行ったが悪手を打った

八代目社長 八郷隆弘 2015-2021  経営☆☆ 技術革新性
唯一本田技術研究所社長を経なかった人物!
そして本流の北米担当ではなく傍流の中国担当出身の方。本田技研工業㈱と㈱本田技術研究所を事業統合し、聖域に初めてメスを入れました。

研究所についに構造改革のメスが入る

2019年研究所の二輪開発部門を本社の二輪事業本部へ統合、2020年四輪開発部門も本社へ統合したのです。意思決定の迅速化が名目。危機意識からの改革だったのですが、当ブログの見立ては将棋で言う読み間違えの大悪手です。

企業統治が効かなくなり聖域化していたのは、研究所社長が本社社長になる既定路線が官僚的ピラミッド構造を作ってしまったからで、本社が研究所の社長に任せて自由な研究をさせるだけでよかったのです。多くのノーベル賞学者を輩出してきたIBMのワトソン研究所やATTのベル研究所(現在ノキアが所有)などの独立した研究所トップが本社の社長になることなど決して無いのです。解決方法の方向性が違っている!というのが当ブログの見立てです。

未来への研究は継続されるということですが、主要事業の二輪と四輪の研究部門が本社統合されてしまい弱体化した研究所では、他社が手掛けていないようなユニークな研究ネタはもう出ないかもしれません。Asimoも前進しない可能性が濃いでしょう。

リストラが始まった

狭山工場、トルコ工場、イギリス工場閉鎖とF1撤退を決断。自前主義の方針転換を行い自動運転でGMとのアライアンスを締結したのもこの方です。

選択期~エンジンを捨てEVへ全ベット(賭け)はギャンブルではないのか

九代目社長 三部敏宏 2021-    経営☆☆ 技術革新性
2040年の脱エンジンを目指し、すべてEVと燃料電池車にすると宣言しました。社内エンジン派は脱二酸化炭素はEVだけではなく内燃機関を残す道もあると反発していますが、方向性がはっきりしなくなると三部社長は否定的です。Hondaにとって間違いなく未来への分水嶺となるでしょう。

自前主義の見直し

ホンダ伝統の自前主義を見直す方針を示し、八郷前社長が締結したGMとの協業を更に拡大する方向性を強く打ち出しました。自動運転にとどまらず、EV共同開発に舵を切りました。互いの方針の違いから狂いも生じ、2023年GMとの価格帯3万ドル中小型EV共同開発は中止されています。戦略見直しに追い込まれたと言っていいでしょう。

自前主義をかなぐり捨てた三部社長は突き進みます。韓国LGエナジーソリューションと合弁でEV向け電池工場を設立、投資額はなんと44億ドル。年間投資額の7割です。

北米事業出身vs中国事業出身と技術畑vs営業畑に決着

2022年対立関係と言われる中国担当出身の倉石代表取締役副社長が代表権を外れて取締役会長に就任しました。倉石氏はエンジニアではなく営業系ですから、技術系の本流が経営権を握ったことになります。三部社長の方針はますます増幅されていくはずです。

EVの成否

ソニーとのEV共同開発はシンボリックなイベントです。EVに大きく傾注する三部社長ですが、中国勢やテスラに勝てるのでしょうか。

しかしながら別記事「メタンハイドレートの成否~水素エンジンとe-fuelで車は走る」でお示しした通り、内燃機関(エンジン)は残る可能性は強いのです。Hondaの思い通りの未来予想になるのでしょうか。EVとFCV(燃料電池車)への全ベットには不安を感じずにいられません。

EVにおけるテスラの凄さ

テスラのEVが他社のEVと決定的に違うのはその思想です。イーロン・マスク氏はやはり天才だと思います。💡彼はEVの欠点を、管理するソフトで全て解決することにしたのです。加速、急ブレーキ、充電切れ、バッテリー劣化などはもちろん、充電待ち時間の娯楽まですべてその真髄であるソフトウエアが解決します。テスラEVのソフトウエアは、常にアップデートされ最新の状態が維持できます。💡欠点のカバーを全てソフトウエアで行うテスラは、ハードウエアで解決しようとする日本メーカーとは全く違うアプローチなので極めて戦いにくい相手なのです。

HondaとAsimoを予想する

歴代社長の系譜を辿っていくと、Hondaがダイナミックな研究を行っていた時期に、破天荒な人物たちが生み出した中の一つがAsimoだと分かります。💡藤沢翁が分社化した本田技術研究所が弱体化していった時期こそAsimo停滞と時期を同じくするのです。

つらい命題に答えなければなりません。Asimoが過酷な環境で動けるように改良されて、福島で働く姿は描けないのです。Asimoの遺産、アバターロボットはいびつな進化にしか見えないのです。

それとともに、現在北米事業の利益が急回復し株価も上昇中のHondaですが、ホンダイズムの源泉 本田技術研究所が弱体化し、7代目社長から現社長までの3代に渡る決定を見てくると、Hondaの未来も描けないのではないかというのが当ブログの結論となってしまいます。

<strong>「ダイハツ不正で独り言です」</strong>
「ダイハツ不正で独り言です」

本田技研工業と本田技術研究所のような関係性を持つ企業統治形態は、Hondaが「所有と経営の分離」という明確な意思のもと、研究所トップが「監督と執行の分離」という最大のメリットを活かして自由闊達な研究を行ってこそ力を発揮すると思う。
そのフィルターを通すと、ダイハツや日野自動車の不正は見えてくるものがある。両社ともトヨタ自動車の子会社で、そのトップは多くがトヨタの副社長などから転じている。出世争いから降りた方が安全運転したいのは当然だが、トヨタの「所有と経営の分離」のもと「監督と執行の分離」で存分に暴れてこいというトップではないよね。
経営のプロをトップに据えないと二社とも衰退していくんじゃあないだろうか。

(2)手術支援ロボットの列強たち

手術支援ロボットとは、医師の腕となる部分はロボットアームが代行、操作は離れた場所でコクピットから行います。手ブレのないアームと鮮明な3D画像で精緻な手術が正確にできるのです。まさに手塚治虫の漫画 ブラックジャックの世界が実際にあるのです。今後は5Gの活用やAIの発達で、遠隔操作や手術の自動化も視野に入ってきます。2027年には世界市場は190億ドル(2兆8000億円)を超えると予想されており、大きな市場が見えてきます。

インテュイティブサージカル~ダヴィンチ

現在国内市場は米インテュイティブサージカル社(Intuitive Surgical)の手術支援ロボット「ダヴィンチ」がほぼ独占状態です。その「ダヴィンチ(da Vinci)」の特許が2019年に切れました。対抗する日本の本命は「hinotori」です。この手塚治虫の漫画を連想させるネーミングにも惹かれます。その実力と今後の展開が興味をそそります。

出典:Intuitive Surgical社HPよりhttps://www.intuitive.com/en-us/products-and-services/da-vinci/vision

メディカロイド~hinotori

シスメックスと川崎重工が折半出資するメディカロイドの「hinotori」が2020年8月製造承認を取得し12月には初の手術が実施されました。前立腺がん手術で泌尿器科では手術支援ロボットが急速に普及し始めています。上位機種で3億円は優にする「ダヴィンチX」より、価格優位性があり省スペースのhinotoriは充分にシェア獲得を狙えます。

出典:メディカロイドHPよりhttps://www.medicaroid.com/top.html

保険適用との関係性

手術支援ロボットは保険適用と点数加算に深く絡んでいます。点数加算がつかないと、腹腔鏡手術に比べて病院側の手取りが減るのです。前立腺がんと腎臓がんだけだった適用範囲は2018年から新たに胃がん、食道がん、膀胱がん、直腸がん、肺がん、子宮体がん、縦隔悪性腫瘍のがんと子宮筋腫、心臓弁膜症、縦隔良性腫瘍に広がりました。2020年膵臓がん、食道がん、2022年結腸がんへと広がっています。
点数加算は、前立腺がんと腎臓がんだけでしたが、2022年の診療報酬改定で胃がんに対する胃全摘術、胃切除術、噴門側胃切除術に適用が認められました。今後も適用拡大は増加すると予想できます。

価格優位性が必要な訳

「hinotori」の「ダヴィンチX」に対する価格優位性は、必要手術件数の試算にも影響を与えます。3億円する「ダヴィンチX」の年間必要手術件数300件の試算に対して、「hinotori」は100件で済むと言われています。中規模病院や大都市以外にも使用可能な対象病院が増えることが予想されます。

追い風が吹く

2023年9月「hinotori」がシンガポールで販売承認を取得しました。国外初の薬事承認です。シンガポールでは現地法人を設立しアジア・オセアニア地区における輸出の活動拠点としていく予定です。

こうした様々な追い風を受けて、「hinotori」は2030年1000億円の売上を目指しています。手術支援ロボットのメディカロイドがもたらす利益は、シスメックスと川崎重工に落ちるわけで、株価にも影響を与えるはずです。

企業統治は創業家統治型だが疑問符が就く人事

シスメックスは創業家統治型の企業です。創業者中谷氏から娘婿の家次氏へと引き継がれ、世界的医療機器メーカーへと成長していきました。

2023年4月家次社長は、メディカロイド社長浅野薫氏をシスメックス社長へ昇格させ、27年ぶりの社長交代となりました。💡浅野氏は2020年からメディカロイド社長として会社を引っ張りましたが、親会社から経営を任せられる「所有と経営の分離」、この形態こそ当ブログ推奨の最強経営形態だったのです。親会社のシスメックスが全幅の信頼を置き、浅野氏にメディカロイドを任せたのです。ところが家次氏は浅野氏を本社社長に引き上げ自らは会長兼CEOという二重権力構造に変えてしまいました。うーん、これでは両社とも力を充分に発揮できません。

どうして日本の創業家は有能な経営者に任せる経営形態を取らないのか本当に不思議です。シスメックスの企業価値は、新経営形態で停滞するでしょう。気になるのはメディカロイドです。浅野氏は副会長になり、創業家と現社長と副会長の三重構造になりました。勃興期の手術支援ロボットが彷徨わないかが本当に気がかりです。

シスメックス株価乱高下の理由

ではなぜ、この最強の企業統治「創業家統治型」にもかかわらずシスメックスの株価乱高下は起こったのでしょうか。創業家と言っても現在の持ち株は一族全て合わせても30%に満たず、圧倒的ではありません。シスメックスは外国法人が多くの株式を持っています。会社の利益がいくら順調であっても、💡株価を決定するのは間違いなく需給です。「噂で買って事実で売れ」という格言があります。外国勢はこれを実践しているので、日本の個人株主は翻弄されているのです。シスメックスには期待を抱かせたり萎ませたりするニュースが多く出回ります。期待値で大きく上がった株価はそれだけでは維持できず急落する、これを繰り返しているように見えます。

シスメックスの企業統治の変化は若干の将来への不安を抱かせます。である以上、家次氏が率いる創業家統治型企業ですが長期保有には不向きと見ます。戦略としては事実で消えた株価下落局面で買い、噂で上がる上昇局面では長期保有は考えずに売却が賢明だと思います。

<strong>「独り言です」</strong>
「独り言です」

HondaもSysmexも良い分析にはならない。中長期保有する株ではないと思う。株価変動は需給が決めるから売買で儲かる局面もあるだろうけど、最後は企業価値に戻るはず。まさに「噂で買って事実で売る」株だと思うから、利益が出たら売ればいいと思う。
今勢いよく上がってても期待値だけで上がっている会社も多いよ。中長期保有していい会社とそうではない会社は見極めていたいね。

※個別株予想は、あくまで個人的見解を示したもので、投資を勧誘や推奨するものではありません。
過去の実績や未来の予想は投資成果を保証するものではありません。
売却を勧めるものでもありません。
投資の判断は皆様ご自身の決定にてお願い致します。

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