分社化から再集結へNTTの過去に遡り現在を見つめて将来価値を予測してみる。
過去~象徴的な株価と今までの売出し価格
NTTの前身である国営の特殊法人 日本電信電話公社が1985年民営化されることとなります。
株式会社化され100%政府保有であった株を民間に売り出していき、政府保有義務の3分の1近くまで6次の売出しを経て現在に至っています。
激しい株の乱高下の歴史の中で売出し価格も上下し、数度の株式分割が繰り返されています。
現在の株価を株式分割前の価格に引き直したものが補正前株価で当時の1株の売出し価格です。
補正後株価が株式分割後の現在の1株価格に引き直した株価になります。
1987年の1次売り出し後はバブルの熱狂の中119.7万円の売出し価格は318万円の高値を記録しました。しかしその後はその高値を抜くことはなくバブル崩壊とともに株価は大きく沈むことになります。1999年のITバブルで息を吹き返したかに見えたのもつかの間、ITバブル崩壊とともに株価は再び下落、ついに2011年上場来安値の805円をつけ高値(補正前: 318万円)から10分の1近く(補正前: 3,220円)に落ち込んだのです。
■NTT象徴的株価の一覧
時期 | 補正後株価 | 補正前株価 |
---|---|---|
1987/04/22 | 7,794円 | 上場来高値 318万円 |
1999/11/25 | 4,755円 | ITバブル高値 194万円 |
2011/03/15 | 805円 | 上場来安値 3,220円 |
2009年1月4日を効力発生日として、普通株式1株につき100株の割合をもって株式分割
2015年7月1日を効力発生日として、普通株式1株につき2株の割合をもって株式分割
2020年1月1日を効力発生日として、普通株式1株につき2株の割合をもって株式分割
■NTT株売り出し一覧
時期 | 売出し価格(補正後株価) | 補正前株価 |
---|---|---|
1987/02/09 | 1次売出 2,934円 | 119.7万円 |
1988/11/19 | 2次売出 6,250円 | 255万円 |
1989/10/28 | 3次売出 4,657円 | 190万円 |
1998/12/18 | 4次売出 2,096円 | 85.5万円 |
1999/11/12 | 5次売出 2,334円 | 95.2万円 |
2000/11/10 | 6次売出 2,326円 | 94.9万円 |
2009年1月4日を効力発生日として、普通株式1株につき100株の割合をもって株式分割
2015年7月1日を効力発生日として、普通株式1株につき2株の割合をもって株式分割
2020年1月1日を効力発生日として、普通株式1株につき2株の割合をもって株式分割
出典:Yahoo!ファイナンス
【考察1】株主構成について~企業統治体制から考察すると非常に堅固
1985年の民営化後6次の売出しを経て現在に至っていますが、日本電信電話株式会社法により政府保有義務があり発行済み株式総数の三分の一以上の株式を保有していなければなりません。所有名義は財務大臣となっています。また、外国人は議決権3分の1以上を保有できません。
第8代澤田社長が「破壊者」になれた訳
これによりNTTは「所有と経営の分離」が強固な企業統治となりました。法律に守られたNTTは実質国が所有し経営をNTTに委ねる安定した企業統治を持つ国策会社となりました。更に、経営が官僚の天下り先ではないのは国策会社INPEXなどとの大きな違いで、歴代社長は全て民間出身で初代真藤氏以外はNTT出身者が占めています。この企業統治で経営センスがあるトップが座れば企業としてのパフォーマンスは非常に大きいと見ています。
そのうえ更に、多くの大胆な改革を行い「破壊者」と言われた澤田社長(2018年-2022年)は、社長退任後代表権を持つ会長になりましたが、実はこれは30年ぶりのことになります。2代目社長の山口開正氏以来のことでした。💡それは正に社長在任中は会長職が空席であったことを意味し、絶対権力者として「監督と執行の分離」を享受し思い通りの大きな決断が出来たことを意味します。2022年に代表権を持つ会長に就任し、権力を維持した澤田氏ですがその実績からすると、権力を維持したことでNTTの更なる変革が進むのではないかと期待が持てます。NTT東日本とNTT西日本の統合や完全子会社化が具体化すれば株価に大きなインパクトを与えるでしょう。
代 | 社長 | 在任期間 | 社長退任後の役職 |
---|---|---|---|
第1代 | 真藤恒 | 1985年-1988年 | 代表権のある会長 |
第2代 | 山口開正 | 1988年-1990年 | 代表権のある会長 |
第3代 | 児島仁 | 1990年-1996年 | 相談役 |
第4代 | 宮津純一郎 | 1996年-2002年 | 相談役 |
第5代 | 和田紀夫 | 2002年-2007年 | 会長 |
第6代 | 三浦惺 | 2007年-2012年 | 会長 |
第7代 | 鵜浦博夫 | 2012年-2018年 | 相談役 |
第8代 | 澤田純 | 2018年-2022年 | 代表権のある会長 |
第9代 | 島田明 | 2022年- |
その一方で第9代社長の島田氏は権力の二重構造に苦しむでしょう。島田氏は総務・人事出身の事務系で営業系の澤田氏とは違い、澤田氏が「動」なら島田氏は「静」だと言われています。澤田・島田ラインで経営している限りは大胆な改革は継続されると思いますが、官僚的な考えの方がトップに就いたり、官僚がそのポストに就いたりするとあらぬ方向へ行くことになります。澤田体制後どうなるかを見据えた注視が今後は必要です。
澤田体制まで何故破壊は起こらなかったのか
日本電信電話株式会社法の附則に基づき、民営化後5年後の1990年から組織の再編が検討され続けてきました。それは旧郵政省主導の独占力を弱めて競争を促す歴史でした。企業としての自由な活動は大きく制限され続けてきたのです。
- 1988年NTTデータの分社化
事業分離型の企業として分社化
- 1990年市内市外分離と移動体通信の分離完全民営化提言
- 1992年NTTドコモの分社化
民営化後5年の1990年の提言に基づき分社化
- 1996年長距離通信会社1社と地域通信会社2社に再編が発表される
- 1997年NTTの純粋持株会社化の解禁
長距離通信会社は民間会社、地域通信会社は特殊会社となることが決まる
- 1998年NTTドコモの東証1部上場
- 1999年NTTの持株会社化によりグループ体制が出来る
地域通信会社としてNTT東日本、NTT西日本が、長距離通信会社としてNTTコミュニケーションズが設立されNTTを純粋持株会社とするグループ会社化
既に分社化されたNTTデータとNTTドコモが特殊会社に移行しグループ会社となる
澤田社長の改革の年表~再び集結へ
- 2018年グループ体制の整理
NTTコミュニケーションズ、NTTデータ、ディメンションデータ(南ア)の全株式をNTTに移管
- 2020年グループ体制の整理~再び集結へ
💡4兆円を投じNTTドコモを完全子会社化
- 2021年NTT東日本とNTT西日本の基幹システムを統合
日本電信電話株式会社法により組織統合に制約はあるが、システム統合に制約はなくこれまで別々に開発してきたシステムを一本化した
- 2022年1月グループ体制の整理~長距離・モバイル通信事業のNTTドコモへの一元化
NTTコミュニケーションズ(長距離・国際通信を担うNTTの完全子会社)をNTTドコモの子会社とする
NTTコムウェア(NTTグループのシステム開発)の株式の一部をNTTからNTTドコモに移管→NTTドコモ66.6%NTT33.4%
- 2022年10月グループ体制の整理~グローバル事業強化に向けた再編
NTT,ink.及びNTT,ltd.をNTTデータ傘下に移管しグローバル事業を統合
改革後の組織は
💡澤田社長の改革は総務省主導ではない点が非常に価値があり、経営センスのない官僚が主導するとどうなるかは多くの例が示しています。当ブログ企業研究ではアラビア石油が一例です。現在澤田氏は代表権のある会長に就き権力を維持しています。澤田会長の影響下にある間のNTTは改革を継続するでしょう。
【考察2】過去の壮大な構想から考察できること
携帯電話と光ファイバーの普及を成し遂げた構想
1990年VI&P(Visual,Intelligent&Personal communication service)構想を発表、当時は世界から本当にできるのかと疑問視された構想です。携帯型ポケットテレホンの2005年までの普及、光ファイバー網の2015年までの全家庭への接続などです。現在は当たり前かもしれませんが、当時はこの構想が何を意味するかすら一般には明確にわからなかったはずです。そして実際はスケジュールより早く達成しているのです。その予見した技術は加速度的に進歩し、予想もしなかった派生効果は世界を大きく変えていきました。
維持できた研究開発体制
NTTは経営計画を非常に高い確率で実現してきた会社です。しかも前倒しで。民間企業でよくある、意欲的な中期経営計画を立てたが全く実現しなかったというのとはわけが違います。技術開発力は非常に信頼性が高いと思います。過去の分社化の歴史の中でも研究開発体制は守り通し分社化されていないのは大きな要因です。後述のIOWN構想も必ず実現するでしょう。
【考察3】現在の株価と会社の状態から考察できること
2022年9月16日現在の株価は3845円で最近は持ち直しの傾向です。2011年の最安値までに損切りした人も一定数いるはずと思われますが、最高値から10分の1にまで落ちた株をそのまま保有せざるをえない人も多数いるはずです。保有せざるを得なかった人たちの売り圧力がまず考えられるのが3次売出の方たちです。4500円4600円辺りが壁になるでしょう。それを抜けると2次売出の方たちの壁までの6000円まですんなり行くのではないかとみています。
自己株式取得には極めて積極的かつ継続的であり、保有する自己株式の消却についても大胆に実行しています。EPS(一株当たりの配当)も意欲的な目標を持ち、企業価値の向上のため有効な策を打っているようにみえます。それは2022/01/31 携帯電話子会社のNTTドコモと長距離国際通信を担うNTTコミュニケーションズ、システム開発のNTTコムウェアを経営統合し、より強力な集合体を目指していることからもわかります。
💡NTTはネットワークとシステムソリューションをトータルで提供できる、競合相手が世界でも見当たらないカテゴリーの非常にユニークな企業グループです。
【考察4】未来の構想IOWN
ゲームチェンジャーになるための材料はIOWN構想、6G、中央銀行デジタル通貨CBDCとデジタル円DCJPY、メタバースなどでしょう。NTTはこれら全てに絡んでいます。そしてどれもどういうものか分かりにくいですね。💡分かりにくいということは極めて重要です。
IOWN:アイオン構想(Innovative Optical and Wireless Network)は光技術を使ったゲームチェンジャー的構想です。
- オールフォトニクス・ネットワーク(全てに光技術を導入)
- デジタルツインコンピューティング(デジタル技術による実世界の未来予測)
- コグニティブ・ファウンデーション(あらゆるものをつなぎ制御する)
以上の3つから成り立つ構想です。しかしこれを見て一体どういう事ができるのか、何がどう実際に変わっていくのか具体的にイメージできる人がどれほどいるでしょうか。未来の壮大な構想でありまだ現実社会での内容が湧いてこないというのが正直なところではないですか。
しかし💡「【考察2】過去の壮大な構想から考察できること」で述べたVI&P構想が発表された時期と実現した過程や今までの革新的IT技術が発芽したばかりの時期を見てほしいのです。仮想通貨が出だした頃、GAFAMの勃興期にこれら技術や企業が何をしようとしているのかどうなっていくのかはっきりと認識していた人がどれほどいたでしょうか。
新しい技術はその時には分からない。過去を振り返ってそうだったのかとなるのです。
何をしようとしているのか分かりにくい順に将来は有望です。完全に理解できるものや認知されているものはみなが知っていてイメージも未来の推測も誰でもできるのです。具体像が見えてきて皆が周知し始めたとき、株を保有していないと上昇の果実は得られません。それが何時か、何時株価が上がるのか今はわからないというのが正確な表現です。
NTTは構想を実現する会社だと思います。しかもスケジュールよりも早く。それはVI&P構想が証明しています。一旦実現が見えてくると技術革新は加速度的で派生的です。どのようなゲームチェンジが待っているか分かりません。予想を大きく超えるかもしれないしさほどでもないかもしれません。予想を大きく超えてくれば株価にも力強く加速度的に反映されるでしょう。6Gも絡むIOWN構想の実現予定は2030年。それより早く実現が見えてくると予想します。
NTTアニュアルレポートから具体例をお示しします。IOWN構想がなんだか少し分かったような気になりませんか。
そして実現までのスケジュールです。前倒しで実現してくると予想しています。具体的に理解が進めば進むほど株価に反映してくるでしょう。
【考察5】沢山のよく分からない事業たち
【6G】第6世代無線通信規格
現在の最先端通信規格5Gの次を担う規格です。NTTは光技術を核に低消費電力、大容量、低遅延、高品質の通信規格整備を目指しています。そのために初めてKDDIと次世代光通信技術開発で提携しました。
そしてこれはICT(Information and Communication Technology情報通信技術)インフラであるIOWN構想に必要不可欠な技術であり密接なつながりがあるのです。
【CBDCとDCJPY】中央銀行デジタル通貨と円建てデジタル通貨
CBDCはCentral Bank Digital Currencyの略になります。日本銀行など各国中央銀行が発行するデジタル通貨になります。日本銀行は個人や民間企業が利用する一般利用型CDBCの実証実験を進めています。これがどのように世界を変えていくのかまだ完全に予測することは難しいのですが、ひょっとすると銀行の決済機能は存在意義を失うかもしれません。
DCJPYは日本の3メガバンクを含めた70社以上の民間企業が開発を担う、完全に円と連動した円建てステーブルコインです。暗号資産のブロックチェーン技術を使い、コイン移転を記録する「共通領域」と、ものや権利の移転と一点の指図内容を記録する「付加領域」の2層構造になっています。暗号資産と違い価値が安定し業務の効率化につながるとされています。NTTは主要メンバーの中の1社です。
【メタバース】インターネット上の仮想世界
アメリカのフェイスブックはメタバースに賭けて社名をMetaに変更しました。NTTは子会社NTTコノキューを設立し「DOOR」という仮想空間を提供しています。メタバースは既に仮想空間内で土地を売買したり新しい商用施設を作ったりと現実世界のように変貌し続けています。「DOOR」でも個人がバーチャルショップを出店することが可能です。そしてこの仮想世界にはデジタル通貨は極めて親和性が高く、IOWNのようなインフラが整備されれば加速度的に進歩するでしょう。イメージが今ひとつ出来ない方はスピルバーグ監督の映画「レディー・プレイヤー1」をAmazonで視聴してみてください。理解が進むと思いますよ。
メタバースではバーチャルオフィスでアバター(自分の分身)を参加させて会議を行うことも可能になります。アバターがバーチャル空間で行う振る舞いを証として残すのに欠かせない技術がNFT(Non Fungible Token非代替性の証=デジタル空間で唯一無二であることを証明する仕組み)です。NFTはデジタルアートがオリジナルを証明することに用いられたため、作品が価値を持ち売買されることから知られるようになりました。NFTの情報管理はブロックチェーンの技術を用いており、このプラットフォームの実現に取り組んでいるのはNTTデータが担っています。デジタル通貨との親和性も高く6G技術は大きく後押ししますしIOWNのプラットフォームは市場を大きく拡大するでしょう。
このような一般人の多くが明確にイメージできない技術にNTTはことごとく関わっています。このような技術が理解されだしてからでは遅いのです。💡沢山のよく分からない技術たちに早く投資しなければ果実は得られません。
予測する
現在多くの証券アナリストは強気姿勢で株価目標を4,500円から少数であるが5,000円としているアナリストもいる状況です。現在4,000円手前で足踏みしていますが、NY市場が下げて日経平均が連れ安になってもNTTが大きく下げることはないと見ています。2020年完全子会社化したNTTドコモの安定的な収益構造と中期経営計画の370円という高いEPSの目標が裏付けですが、加えてIOWN構想、6G、CBDCやDCJPY、メタバースなど将来への期待値が大きいと思っています。株価は将来の期待値を折り込みます。
今後の社会を変える可能性のあるIOWN構想が具体的に見えてくれば来るほど2次3次売出の方たちの売り圧力を超えて大きく上昇すると見ています。技術革新の具体像が見えだすのは2030年よりかなり手前のはずであるからこの1年2年で果実を手にするためにしっかりホールドし売り時を見極めるべきです。熱狂が始まればアナリストの予想を越えてくるはずです。
熱狂の最中が売りどきです。株価の予測は不可能です。だからピークで売ることを考えてはいけません。熱狂が来ればそのときが売りです。
NTT株は2次3次売り出し時の含み損を抱えている人達の売りを乗り越えて上がっていくと思う。熱狂のピークが何時かはわからないからその最中に売るべきだな。皆が買いたい時に売り切れるかどうか。永遠には上がらないから。何故なら澤田会長時代は買いだけど、会長退任後に次のトップが安全運転に入ったら停滞のおそれありだから。株価の熱狂と破壊者澤田会長が揃っている時が絶好の時期で、2次売出し価格とかターゲットにしてはどうかな。売るのが一番難しいね。
※個別株予想は、あくまで個人的見解を示したもので、投資を勧誘や推奨するものではありません。
過去の実績や未来の予想は投資成果を保証するものではありません。
売却を勧めるものでもありません。
投資の判断は皆様ご自身の決定にてお願い致します。